oasismathの日記

趣味として楽しんでいる料理やワイン、家族がみんな大好きな音楽やダンスの話など、雑多なテーマについて書き綴るブログ。

ソフトバンク「Sprint買収について」について思ったこと

2013年4月30日、ソフトバンクがスプリント社買収に関して敵対するDish社に対する比較優位性を示すプレゼンを行いました。

 

http://www.softbank.co.jp/ja/design_set/data/irinfo/library/presentation/results/pdf/2013/softbank_presentation_2013_004_01.pdf

 

孫社長は具体的に9つのカテゴリー(シナジー考慮前後買収対価、買収時期、レバレッジ、ストラクチャー、資金調達、ノウハウ、シナジー、パートナーシップ、ガバナンス、税効果、周波数)でソフトバンクの優位性を示し、畳み掛けるような説得力がありました。

中でも説明の大部分をシナジー効果による価値の増減について割いていましたが、個人的には評価の仕方でいろいろ変わってしまうと思いますので(1年間の資金注入の差をソフトバンクの10%の資本コストで割り引くなど)、今回はより分かりやすい負債比率に注目したいと思います。

ソフトバンクは買収後の純有利子負債EBITDA倍率が3.0倍ですが、Dish社の倍率は5.9倍となり、これは孫さんの説明通りかなり危険な水準だと思います。

かつてソフトバンクがボーダフォンを買収した時、同倍率は5.6倍でしたがこれは成長し続けなければ生き残れないレベルの水準だったのではないでしょうか。実際、2009年3月期のウィルコムは有利子負債EBITDA倍率が3.20倍で、その年の9月にADRを申請しました。

この5.6倍は孫さんのようなアグレッシブな経営で何とか乗り越えることができましたが、Dish社の現状のような成長率、利益率で経営した場合、将来改めて支援を受ける必要があるレベルの危険な財務状態かと思います。

正直、なぜここまで危険な掛けをしてDish社が買収合戦を挑んできたのか首を傾げてしまいます。

 

またもう一つ特徴的な比較は資料P.39の絵で、ソフトバンクがアップル、グーグル、サムスン、エリクソン、...など重要な企業とパートナーシップをとっているのに対し、Dish社はほぼ協力者なしの状態から出発することとなり、成功する確率はかなり低いのではないかと想像させられます。(このあたりのプレゼン技術は秀逸です。)

 

もちろんソフトバンクから出された資料なので、ソフトバンクが有利となるように資料が構成されていますが、そこを割り引いてもDish社に勝ち目はないのではということを印象づけるプレゼンとなっていました。

 

昨年10月にスプリント社買収の提案をした時のプレゼンでは、微妙に良く見せようとする意図がチラホラ見られ(例えば比較すべきでない企業と比較して優れているとアピールするなど)、もう少し正直に語って欲しいと不満を持ちました。

しかし今回は全体的により洗練され、説得力が増し、聞いていてすんなりと納得することができました。プレゼン中は所々にユーモアをはさみ、また説明後の会場からの質問に対してはもとても真摯に回答しており、とても好感の持てる発表となっておりました。