oasismathの日記

趣味として楽しんでいる料理やワイン、家族がみんな大好きな音楽やダンスの話など、雑多なテーマについて書き綴るブログ。

最近の国債の金利上昇の煽りについて思うこと

今週は木曜日に日経平均が1000円以上下がる暴落、また今日も値幅が1000円以上となるなど、株式市場が大荒れの展開となっている。

また同時に長期金利が1%を超えたことがニュースになるなど、債券相場も乱高下が続いている。

ヤフーニュース:長期金利が急騰、1%台に 1年2カ月ぶりの水準

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130523-00000016-asahi-brf

長期金利推移:日本相互証券株式会社

http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata01.html

 

このマーケットの混乱を背景に、一部の経済評論家や学者、政治家はここぞとばかりにアベノミクスを叩き、自らの主張の正しさを自慢気に語っている。

また誰とは言わないが、これによって国債バブルは弾け金利が急上昇、また株式相場のプチバブルも終了し日本は崩壊に向かいつつあるなどという煽りコメントもちらほら見られる。

 

しかし本当に彼等が懸念するようなリスクが今高まっているのだろうか?

まず、長期金利の水準は、日本相互証券株式会社のデータによれば新発10年国債利回りは2013年 05月 23日の終値ベースで0.835%、はっきり言って全然高くない。過去10年の金利水準と比較してもらえばわかるが、この水準はほぼ最低水準に位置するレベルだ。本当に警戒が必要なのは過去10年のピークに近い2%を超えたレベルからだ。

また、これから国債のリスクを避け、金融機関や海外投資家が国債をどんどん売ってきて、金利が急上昇するだろうとのシナリオも喧伝されている。しかし彼等は本当に国債を売ることができるのだろうか?もし売って現金化したとしてそれじゃあ何に投資をするのだろうか?

下のグラフは2012年12月末時点の国債保有残高(単位億円)だ。12月末の時点で国債の発行残高は727兆円、そのうち半分近い額を銀行が保有し、残りを生損保や年金が国債を保有している。「外国人が〜」というが、ここで見ると残高は35兆円、そのうちの多くは投機的に行動しない投資家と考えられ、数兆円レベルの投機筋だけで金利のトリガーを引くのは難しいのではないかと思われる。

また金融機関の中にも一部国債を売ることはあるだろうが、銀行も利回りを得てなんぼのビジネスで、銀行預金金利と投資先の国債金利の差が彼等の収益となる。そしてその格差は、預金者の個人個人が今の金利に満足できず、代替資産に投資し資金が銀行から出て行くようになれば、銀行は国債を売らざるを得ず、それが結果として金利上昇につながる。しかし預金者は今、多額の現金を引きだして株にガンガン投資しているのだろうか?あるいはさらに投資するようになるのだろうか?個人的には、日本の国民性からして現段階でそのように積極的な行動をとるとは思えない。

さらに言えば、残りの国債保有者である生損保や年金についても、保険や年金の低利を日本国民の個人個人が受け入れている限り、彼等は利回り格差を享受することができ国債を売る必要性はない。

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(出所)日本銀行「資金循環統計」より

 

 

そうは言っても、最近の株高や景気見通しの改善に伴い、合理的なプライシング機能が働いて日本国債に対して要求されるプレミアムは徐々に高くなるだろう。しかしながら、国債に対する将来の買い手として日銀が控えていることを認識する必要がある。異次元緩和によれば、日銀は年間50兆円規模のペースで長期国債の買入れを行うと言っている。上の残高のグラフを見ればわかるように、50兆円といえば海外投資家の保有国債を全て購入してもまだ余るレベルだ。これほどの額で将来にわたり国債を購入することが約束されている中で、一部の投機筋が合理的に値付けされるレベルを超え金利上昇を仕掛けることができるだろうか?

 

このような点を考えると、現段階では国債が暴落するようなリスクは非常に低いと考えている。もし暴落するなら、何らかの構造変化なりトリガーが必要だ。例えば日本が経常赤字に陥ることが常態化し、そのファイナンスを海外投資家に頼らざるを得なくなった場合。あるいは短期的に何らかの要因によって金利が上昇し、一部の金融機関が耐えられなくなって倒産し資産としての国債を売却しなければいけなくなった時。国民が何らかの理由で銀行預金を大量に引き出すようなイベントが起きた時。他にもなにかあるかもしれない。

 

しかし現段階で何らかのリスクが発生するような兆候は感じられない。ということで、国債暴落シナリオは各人のただのポジショントーク(特に資産としてポジションをとっていなくても、過去に言ってきたことを正当化することも含む)だと思っている。