半沢アチコ、第二回にして最終回!!
今日のアチコは今朝から不機嫌だった。
昨日までの夏休みが終わり、今日から学校が始まることだけが不機嫌の理由ではないだろう。
いつもなら8時まで寝ているところなのに今朝は6時に目が覚めてしまった。「ああ、今日はあの読書感想文(アチコの倍返し!!)を出す日だ。」アチコは心のなかでつぶやいた。
意識の遠いところから「0655」の声が聞こえる。
机の上に出されたごはんと味噌汁、いつもは5分で食べてしまうのに今日は食欲がわかず、3割ほど食べたところで残してしまった。
母親から罵声が飛ぶが、今日のアチコは気にならなかった。100の憂鬱にもう1つの憂鬱が増えたところで、たいして変わりはないのだから。
いつものエントランスにアチコは向かった。そこにはアチコと同じく今日から新学期が始まる子供たちが、久しぶりの顔を見合って互いにはしゃいでいた。アチコも笑顔になろうと努力したが、どこか引きつった笑いになってしまった。多くの子供たちは気が付かなかったが、心配してた母親だけは気づいていたようだ。母親はアチコに向かって小さくガッツポーズをしていた。
始業のチャイムが鳴り、あの先生が入ってきた。
「今日から新学期だぞ〜、宿題持ってこ〜い!」
アチコは一瞬身構えた。しかしもうやるしかない。
アチコは全速力で先生の机に駆け寄り、あの「読書感想文」を先生の前に提出した。それから後、授業の間に先生は何を話していたのかよく覚えていない。
そして中休みになった。
「アチコちゃん、ちょっと来て。」
と呼ばれた。
「来た!!」
アチコは臨戦態勢へと入った。
しかし先生の口から思いもよらない言葉が溢れた。
「ごめんね〜!」
アチコは拍子抜けした。
しかし一方で、アチコは自分と先生が初めて分かり合えたことを悟った。
たった1枚の作文、たった1つの言葉で相手の気持を良くも悪くも変えることができるのだと。
それからアチコは、学校の友だちとおもいっきり遊んだ。
まるで朝の憂鬱など無かったように。
学校が終わり、母親に渡された連絡帳には、先生からこう書いてあった。
「おっしゃるとおりでございます。今後の指導の糧に致します。」
心配そうにアチコを見る母を横目に、アチコは妹のチオコと一緒に、今度の発表会に向けた歌を楽しそうに練習していた。
※この内容は全て"フィクション"であり、登場する団体や氏名は実在のものとは関係ありません。ましてやアチコの通う小学校とは一切関係ありません。